本研究は,本州の多くの哺乳類の東西の遺伝的境界に位置する小豆島に注目し,そこに生息するニホンザルとニホンジカの分子系統解析を行い,両種が共に本州由来であるにもかかわらず,その遺伝的多様性が大きく異なることを明らかにした論文である.両種の島嶼への異なる移入史とニホンジカにおける過去のボトルネックの存在を明らかにした点は高く評価できる.また,多くの島嶼から成る日本列島において,島嶼哺乳類相の成立過程を解明する本研究は,今後の日本における哺乳類研究の発展に大きく寄与することが期待できる.以上の理由から,本論文を日本哺乳類学会論文賞候補として推薦する.