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内田健太

 多くの研究者が避けてきた「都市環境」や「人そのもの」にあえて着目し,行動学・生理学・動物認知学・都市計画など多様な視点から,人為環境への生物応答の解明と保全管理への応用を目指し,リス科を主な研究対象とし,都市化や人慣れの影響を評価する研究を推進してきた.例えば,人への警戒心を検出する新手法の開発や,人と捕食者への応答を実験的に切り分けて人慣れを検出する方法の提示,長期的な自然観光が人慣れ集団にもたらす帰結を検出する方法を示した.また,公園の環境とリスの人慣れ度合いの関係性を分析し,都市空間の整備により人と野生動物の接触を操作する新たな管理方法を提案した.さらに,哺乳類に限定されない一般性の高い現象として,人慣れの進行が多様な生態系サービスの改変に繋がる可能性を指摘する論文をはじめ,筆頭や共著で複数の総説を執筆している.この様に申請者は,実証だけでなく,野生動物の都市進出や人慣れを研究する新たなフレームワークを提示することで,人と野生動物の共存に向けた次なる研究の展開を示してきた.これらの一連の研究成果は,その高い引用数からも国際的に注目されていることが示され,哺乳類学のみならず,今後の都市生態学を牽引していくことが期待される.

 国際誌論文25本と着実に研究業績を上げている.2020年以来の総被引用数はすでに750を超えており,トップジャーナル(Trends in Ecology and Evolution)での総説をすでに複数持っていることは特筆される.学会では,Mammal Studyや哺乳類科学誌に複数の論文が掲載されており,また編集に関しても査読を複数おこなってきた.過去に哺乳類研究交流会の立ち上げに関わり,若手として学会の発展に貢献してきた.

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