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高田隼人氏

 1991年生まれ.2018年3月,麻布大学大学院獣医学研究科動物応用科学専攻博士後期課程修了.同年麻布大学より博士(学術)の学位を授与.現在は山梨県富士山科学研究所研究部自然環境科研究員.日本哺乳類学会には2012年から会員となり,それ以来ほぼ毎年の年次大会においてポスター発表を中心に多くの発表を行ってきたほか,2017年以来哺乳類保護管理専門委員会カモシカ保護管理検討作業部会の一員を務めるなど,学会活動に貢献してきた.
 高田氏は,ニホンカモシカを主な対象に,個体識別,長期行動観察というオーソドックスな行動生態学的研究を精力的に続けてきた.その結果多くの成果が得られているが,最も重要な点として,従来研究されてきた森林に加えて高山草原という異なる生息環境での知見を積み重ね,後者では雌の群れ形成が促進され,雄との間で一夫多妻性の配偶システムが生じるという,従来のニホンカモシカ像を大きく覆す発見を行っている.さらにその知見に基づいて,偶蹄類の森林から草原への進出に伴う食性や社会構造の変化に関する従来の仮説を,実際のデータに基づいて支持することができた.また,有蹄類のみならず,単独性コウモリ類の行動生態にも持続的に取り組み,ねぐら利用や出巣行動,採食生態などに関する様々な成果を積み重ねている.
 これらの研究成果は,25編の原著論文などとして,数多くが公表されている.今後は国際学会での発表や,国際的に評価の高い雑誌により多く投稿し,国外での評価をさらに高められること,保全や管理のような応用分野にも,より直接的にアピールするような発展が期待される.これまでの業績とその将来性は,日本哺乳類学会奨励賞の受賞にふさわしいものである.

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