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Yasuhisa Nakajima and Hideki Endo: Comparative humeral microanatomy of terrestrial, semiaquatic, and aquatic carnivorans using micro-focus CT scan

本論文は,機能形態学的な見地から前肢上腕骨の内部形態の種間比較を行い,食肉類の水棲適応という哺乳類学における古典的なテーマに関して新たな知見を見出した論文である.著者らは,陸上性,半水棲,水棲の食肉類18 種の標本の上腕骨についてマイクロフォーカスCT を用いて非破壊的に画像解析を行い,骨化点近傍の海綿骨化が,半水棲種で最も低く,陸生種で最も高いことを発見した.これについて,カワウソやアシカなどの半水棲種では陸上での効率的な移動への要求が小さくなるために海綿骨化(骨の軽量化)が低下するが,さらに水棲適応が進んだアザラシ類では水中での効率的な移動と潜水のために再び海綿骨化が進むという水棲適応の道筋を示唆するものだと,著者らは考察している.この仮説についてはさらなる検証が必要だと考えられるが,食肉類の微細形態上の水棲適応がこのような複雑な過程を経ているとの洞察は,オリジナリティが高く,今後の研究の進展に大きく貢献するものと期待できる.また,マイクロフォーカスCT を用いた研究手法も注目に値するものであり,論文の構成,文章表現,論理展開の質も高く,日本哺乳類学会論文賞にふさわしい論文であると判断する.

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