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Foramen magnum angle and its effect on visual field in two Apodemus murids

【題 目】
Foramen magnum angle and its effect on visual field in two Apodemus murids
【著者名】
Kazuhiro Satoh and Fumihiko Iwaku
【号・頁】
33: 151–155
【推薦理由】
 本論文では,Apodemus属の地上性種アカネズミ(A. speciosus)と半樹上性種ヒメネズミ(A. argenteus)の頭蓋形態の比較から,咀嚼筋の発達に伴い阻害される可能性のある樹上での前下方視野がどのように確保されているかについて仮説検証的な議論が展開されています.頭蓋計測値から,頭蓋の大型化が後頭顆の角度に影響を受けない(地上性種と半樹上性種間で大脳化の差異が認められない)こと,頭蓋の大きさと咬筋起始点の高さとの間の差異が認められない(地上性種と半樹上性種間の咀嚼系の差異が認められない)ことを示した上で,樹上性齧歯類における前下方視野の確保が,咀嚼に関わる機能を犠牲にすることなく,後頭顆の角度を変えるだけで達成されていることを示唆しています.すなわち,齧歯類における樹上生活への適応について,咀嚼系や大脳の発達に影響を与えることなく視野を確保するためには後頭顆の角度を変更するだけよいという最節約的な適応進化のモデルを明快に導いている点が高く評価できる点です.生態学的特徴に基づいて機能形態学的命題を検証することにより,興味深い考察を導くに至った本論文は,哺乳類の適応進化を考える上で形態学および生態学の双方から貴重な研究事例であります.加えて,仮説検証的な本論文の展開は,自然科学論文を作成する際の教科書的手順を忠実に踏んでおり,若い研究者のテキストとして十分な役割を果たすことでしょう.
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