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浅原正和氏

 1982年静岡県生まれ.2013年京都大学大学院理学研究科博士課程修了.博士(理学).日本学術振興会特別研究員,京都大学霊長類研究所教務補佐員,中央大学国際教養学部非常勤講師として研究を継続するとともに,現在は三重大学教養教育機構特任講師として教育に携わっている.日本哺乳類学会の運営には,英・和文誌の査読者として,2011年と2013年にはポスター発表賞審査員,2014年には大会実行委員および口頭発表賞審査員として貢献している.2012年にはJSPS Asia Africa Science Platform Program: 2nd International Symposium on East Asian Vertebrate Species Diversityの事務局長を務めている.
 浅原氏は,哺乳類などの頭骨・歯の標本を用いた比較形態学を基軸とし,進化の原動力となる変異性という概念に着目し,哺乳類の進化形態学的な研究について成果を上げてきた.特に博物館に収蔵された多数の標本により,個体変異のパターンから変異性を調査することが可能になっている点に着目し,多数の標本から変異性と進化のパターンを比較することで,変異性がどう進化に影響しているのかを研究してきた.氏の研究は多岐に渡っており,食肉目を材料としたものが多く,その中でもイヌ科,鰭脚類,イタチ科と多様性があり,トガリネズミ形目を対象とした研究もある.これらの研究は基本的な形態学のみに留まらず,実験発生学から提示された発生モデルを形態学的に検討することや,それに機能形態学の知見を合わせて,イヌ科が多様な食性に適応進化できた理由の一端を提示することにまで及んでいる.一方で,普及活動に関わる博物館展示に関する論考や,人文学的・文献学的側面に踏み込んだ研究として,動物の呼称の歴史的変遷を扱ったものや,行方不明のタイプ標本である可能性があった標本の来歴と産地を探る試みがあり,幅広い方向に研究活動を広げている.海外の研究者との国際共同研究も数多く進めているが,一方で一般向け講演などのアウトリーチ活動にも積極的に取り組んでいる.
 それらの成果は,20編の原著論文・書評などとして数多く公表されている.2010年には日本哺乳類学会 2010年度大会(岐阜大学)最優秀ポスター発表賞を受賞した.これらの業績と研究者としての将来性は,日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.

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