CONTACT

亘 悠哉氏

1977年生まれ.2008年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了.博士(農学).日本学術振興会特別研究員(東京大学,森林総合研究所),同・優秀若手海外派遣事業(パリ第11大学),一般社団法人日本森林技術協会森林保全グループリーダー,国立研究開発法人森林総合研究所主任研究員等として研究を継続する.2009年から哺乳類保護管理委員会委員,外来動物対策作業部会員として学会の運営にも貢献している.
亘氏は,外来哺乳類対策について,その実効性を高める重要な研究成果を挙げてきた,わが国では数少ない若手研究者である.2006年には第4回ヨーロッパ外来種会議でBest Poster Award,2007年には日本哺乳類学会でポスター最優秀賞,2008年には日本生態学会でポスター優秀賞,および東京大学農学生命科学研究科で東京大学研究科長賞を受賞した.
亘氏の特記すべき学術的資質として,外来哺乳類問題を生態系管理の視点からとらえ,取り組むべきロードマップ全体を俯瞰したうえで,研究のストーリー作りから研究成果の発信までを一貫して遂行できるという,従来にはなかった視点から取り組める研究者であるという点があげられる.外来種問題を生態系管理の視点からとらえた研究,「回復度」といった外来種対策の評価手法を提案している点などが独創的な研究であり大変評価できる.外来種の影響からの生態系の回復レベルを測定する手法の開発といった生態学的な分析技術に加えて,外来種防除における想定外の要素等を盛り込んだ外来種対策研究は世界的にも最先端の内容であり,高く評価できるものである.今後も,外来種研究や本学会をリードする研究者となることが期待される.これまでに29編の原著論文,1編の総説,4編の著書を公表しており,問題意識が適確な論文が多く,状況の改善を本質から考えることのできる能力が認められる.研究活動だけでなく,環境コンサルタントとしても哺乳類学や生態学的な知見を活かし,生物多様性保全の重要地域の希少哺乳類(南西諸島のコウモリ類,齧歯類及びウサギ類)の保全への提言,シカ対策,保護区の設定など,国の施策や地域行政に対して多大の貢献を果たしてきている.また,国内外の国際会議への積極的な参加やパリ大学への留学(外来哺乳類の生態系管理で有名なCourchamp教授の指導),ボツワナ国におけるJICA 専門家派遣などで海外経験も豊富で,国際的な交流や貢献の実績がある.このように,亘氏は今後の日本哺乳類学会を支える新進気鋭の新たな分野の研究者として大いに期待され,これらの業績と研究者としての将来性は日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.

トップ