CONTACT

江成広斗氏

1980年生まれ.2007年東京農工大学大学院連合農学研究科資源・環境学専攻修了.博士(農学).日本学術振興会特別研究員(京都大学霊長類研究所),宇都宮大学農学部附属里山科学センター特任助教等として研究を継続するとともに,現在は山形大学農学部准教授および岩手大学大学院連合農学研究科准教授(兼任)として教育に携わる.2007年には日本哺乳類学会2007年度大会の実行委員として,また2008年から哺乳類保護管理委員会ニホンザル保護管理検討作業部会員(2013年〜,副部会長)として学会の運営にも貢献している.
哺乳類,特にニホンザルの生態,保護管理に関する研究について成果を上げ,2005年には野生生物保護学会学術賞,2010年と2011年にはそれぞれ野生生物保護学会・日本哺乳類学会合同大会および日本生態学会において最優秀ポスター賞,2010年に宇都宮大学農学部栄誉賞,2013年にはJournal of Forest Research Award 2013(「日本森林学会」発行英文誌の論文賞)を受賞した.
江成氏は,群集生態学的,個体群生態学的および景観生態学的なアプローチによって,ニホンザルの分布回復がもたらす正の側面の科学的評価と,負の側面の特定とリスクの低減を目指す,「多雪地に生息するニホンザルの保全および管理に関する研究」を行ってきた.また,上記3つのアプローチによる研究と並行して,行政や農家を含む様々なステークホルダーとともに,ニホンザル問題の解決を目的とした大規模な社会実験を白神山地において試みてきた.一方,多雪地に生息するニホンザルの社会生態に関する研究を行い,寒冷多雪に対するニホンザルの可塑性について,主に採食生態学的視座から評価してきた.それらの成果を6編の著書,30編の論文などとして数多く公表している.日本社会の人口減少問題を睨んで,農山村の現況・展望を考えながら野生動物の保全問題に取り組むという「近未来日本社会における課題解決・方法論」を研究の背景に持たれており,哺乳類研究者が今後どのように社会貢献するべきかのモデルを提示してくれるような先見の明を持った若手研究者であろう.管理のための人材育成という,社会的要請は高いが業績としては評価されにくい領域にも力を注いでいる点も評価される.これらの業績と研究者としての将来性は日本哺乳類学会奨励賞に値するものである.

トップ